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『富士山を汚すのは誰か』

◎ 世界で最も汚い山
 山頂には自動販売機がずらりと並ぶ。こんな高地にまで自動販売機を置いている山など、世界中で日本にしかないだろう。その空き缶などもあちこちに転がっている。
 そして、どこからともなく漂ってくる悪臭。山小屋からの汚物の臭いだ。トイレから屎尿(しにょう)が流され、トイレットペーパーが山肌に無残な白い川筋を残している。垂れ流し状態なのだ。汚物は地中に吸い込まれていくが、富士山は湧き水豊富な山だ。ぞっとした。 (本文より)



 山頂だけでなく山ろくにも、家電製品やドラム缶、タイヤなどの不法投棄されたゴミがあふれていた。しかし、野口さんが始めた清掃活動により、現在は不法投棄の粗大ゴミも、減り始めたという。また、環境配慮型のトイレの導入で、山頂の屎尿垂れ流し問題も、ほぼ解決しつつあるとのこと。世界で最もきれいな山へと、少しずつ近づいているようだ。

 そいういった活動の成果なのか、富士山は世界文化遺産の暫定リストに入ることができたという。私は、世界遺産と聞くだけで、誇らしく、うれしい気分になる。

 日本人はこの「世界遺産」というブランドが好きだが、世界遺産に登録されれば環境が保護されていいことばかりかというと、けっしてそうとは言えない。

 世界遺産になれば、観光客が増加、地域の活性化が期待できる。しかし、今以上に富士山に登る人が増えると、ゴミやトイレの問題が再燃することになるだろう。

 また、世界遺産になると、さまざまな規制が生じる。その土地で生活してきた人たちの権益に抵触することも出てくるのだという。2004年に世界遺産に登録された熊野古道では、地元の人たちが、林業ができなくなる問題が起きている。

 世界遺産には、「自然遺産」(屋久島、白神山地など)、「文化遺産」(姫路城、原爆ドームなど)、そして「複合遺産」(未登録) がある。富士山は、自然遺産ではなく、文化遺産での登録を目指している。
 富士山を世界遺産にする国民会議
 
 自然遺産には、すぐれた価値をもつ地形や生物、景観などをもつ地域であることが求められる。文化遺産は、すぐれた普遍的価値をもつ建築物や遺産であること。複合遺産は、文化と自然の両方を兼ね備えるものであることだ。

 富士山は、自然遺産の条件は満たしていないので、文化遺産での登録を目指している。文化遺産ということになると、精神的な問題が入ってくるという。

 「富士山は、信仰の場として崇拝されている」「芸術的、創造的な優れた作品を生む母体になっている」といっても、はたしていまの富士山が日本人にとってそういう存在と言えるのか。信仰の対象として富士山に登っている人が、どれだけいるのか。

 野口氏は、富士山を文化遺産としてとらえるのなら、「そもそも、人はなぜ山に行くのか」を軸に考えてみようと提案している。なぜ、あえてつらい思いをして、あえて不便なところにいくのか? そこで何を得たいから登るのか?

 富士山のゴミの現状を知りたくて、軽い気持ちで本書を手に取ったのだが・・・ 「なぜ、山に登るのか?」という面倒な・・・ ところに行き着いてしまった。ゴミを捨てるなんて、とんでもないと無条件に思うのだが・・・
 野口健公式WEBサイト

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